裁判員裁判の件4
write by 皆川 洋美
判決が出てから数日,
「控訴するのですか」
「判決については重いとお考えですか」
といったインタビューをお受けすることがありましたので,
これについての回答を。
「控訴するのですか」
弁護人の意向だけでは決められません。
本人と弁護人とで,複数回の接見でのうちあわせを経て控訴するかどうかを決めます。
また,今回は国選事件ですので,一審と控訴審とでは,原則として弁護人が変わります。
これは,国選事件についての国の考え方によるものです。
弁護活動について,国が意見を言うことは一切ありませんが,
一審が不服であるとして控訴した場合,一審弁護人とは違う目で控訴審を行った方が良い
という考えのもとでの運用のようです。
そのため,控訴してしまえば,わたしは原則として弁護人ではなくなります。
守秘義務は一生解除されませんので,弁護人でなくなっても話せることは変わりませんが,
「弁護人」ではない以上,弁護士であっても,被告人との関係は「他人」になります。
たとえば,控訴理由書に何を書くのか,どういう理由で控訴するのか,そういったことは
わたしには「わからない」ことになります。
「判決については重いとお考えですか」
わたしには対照する材料がないので,一般論としてとしか言えません。
裁判所では,量刑表というものを用いて,類似の事件での量刑相場と比較して処断刑を決めています。
一般的に,「怨恨」で「複数」の「放火」を行うと,たいていはその被害者は犯人の手によって死亡しています。
一方で,「複数」の「放火」には,保険金目的のものや,憂さ晴らしのような小さなぼやを起こして楽しんでいたようなケースも含まれてきます。
そういったものと,今回のケースをどこまで近いと考えるのか,どこまで遠いと考えるのか。
それは裁判所の判断によらざるを得ません。
重いかどうか,今回は裁判所も対照する材料がなかったのではないかと思います。
また,人が亡くなっていないケースでの法定刑内での「上限」というのが,法律上あるわけでもありません。
もちろん,法律上の減軽や酌量減軽のケースはありますが,今回はそういったケースではありません。
そのため,一般論としていけば,軽くはない,ということになると考えています。
かといって,適切なのか,ということになると,個別問題なので,対照する材料がないので「わからない」というのが一番外れていない回答になります。
「彼女と法廷でどのようなことを話しているのですか」
「彼女と接見でどのようなことを話しているのですか」
もちろん,公判の中では,公判で必要なことを話している,ということは間違いありません。
しかし,彼女とのやりとりについて,彼女の了解なく,弁護人から回答することはできません。
それが守秘義務だからです。
私の接見が比較的相弁護人よりも長いことから,「盛り上がったのですか?」と言った質問を受けたこともありました。
接見が「盛り上がる」というのがどのようなことを指しているのか私には分かりかねます。
しかし,具体的な内容についてはお答えできません。
また,全面的接見禁止がつけられ,その後も弁護士以外との接見が一切不可能な人が,取調べ等以外で外部の人と話せる機会があったら…
いろいろな話をしたいと思うのは当然ではないでしょうか。
具体的にはお話出来ませんが,想像に難くないと思います。