私が日常的に取り組んでいる課題として,いわゆる「ブラック企業問題」があります。
こんなブラック企業があったので,お伝えしておきます。
入社するための条件は2つ(原則)。
1つは,大学院を修了していること。
もう1つは,会社が設定する試験に5年以内に合格すること。
大学院も指定された学科でなければならず,指定されていない学科を出ても入社できません。
また,試験に5年以内に合格しなかった場合,もう一度大学院に入り直す必要があります。
入社後1年1ヶ月の研修があります。
その研修の場所は,自宅から通える場所とは限らず,
北は旭川から南は沖縄まで,全ての都道府県があり得ます。
希望は一応聞きますが,通るとは限らず,自分の希望していなかった地域での研修もあり得ます。
研修は朝9時から遅いときには20時以降まで続きます。
研修といっても,基本的にOJTで,座学は殆どありません。
研修中に給与は一切出ません。
生活費がなかったとしても,原則として副業は禁止です。
可能な副業は,大学院の試験採点くらいのもので,
生活費をまかなうのに十分なアルバイトをすることは事実上不可能です。
もちろん,雇用保険,年金,健康保険,いずれもかけてくれません。
会社の中には先輩達が使える共済保健室などがありますが,使うことはできません。
たとえどんなに体調が悪くても。
給与が一切出ない代わりに,一応会社が月々23万円を貸し付ける制度を持っています。
しかし,2人の保証人か,機関保証が求められます。
ちなみに,その貸し付けたお金は「所得」として扱われるので,親の扶養に入ることは出来ませんし,
年金や健康保険の掛け金の免除を求めることもできません。
そして,貸付けた約300万円については,研修終了後5年経ってから,
毎月5万円ずつ返済することが求められます。
海外留学をしたら,その一括返済を求められます。
引越をしてその報告を忘れても一括返済を求められます。
免除されるのは,本人が死んだ時かこれに準じた時くらいのものです。
こんなブラックな会社,なかなかありませんよね。
これ,どこの会社かご存知ですか?
最高裁判所です。
「司法修習生」と言って,司法試験を受けて,裁判官,検察官又は弁護士になる前に
研修を受けている段階の人達の生活のことです。
司法修習に専念する義務を負い,生活費は一切支払われない。
それが,この国が,司法インフラを育てるためのシステムとして平成23年から始めた制度です。
私は幸いにも,この司法修習の時に,「給費制」と言って,
公務員として取り扱われ,給与が支払われ,共済にも加入していました。
もちろん返済義務なんてありません。
しかし,私の後輩達が,この給費制を廃止され,貸与制とされた中で司法修習を行ってきました。
司法試験を受験しようとする人達は平成16年から比べて4分の1以下に減っています。
大学院の学費,奨学金,司法修習の生活費,これらをまかなえる家庭が今どのくらいあるでしょうか。
年間の生活費300万円をとっておけるだけ,司法試験受験生がアルバイトをすることなんてあり得ません。
こんな大きなブラック企業を放っておくことなどできないと考えて,司法修習生の給費制復活に向けた活動をしていますよ。
そして,今回裁判所法の改正が閣議決定されたことによって,今後最高裁はブラック企業とまでは言えなくなりますよ。
という,ご紹介でした。
とはいえ,谷間の世代の問題についてなんら対応策がとられていないことは問題で…。
新65期から70期までの世代はこのブラック企業での司法修習を受けてきているわけです。
この問題を解決する必要があるのではないか!ということで,まだまだ活動は続きます。