お小遣い制なのか,はたまた生活費を渡す方式なのか,
先日,先輩や後輩を交えて,自分の生活費をどう家族と配分しているのか,という話になりました。
弁護士は,弁護士法人の場合そうではないようですが,圧倒的多数は個人事業主だと思います。
なので,売上の中から家族に生活費を渡しているという人が多いようでした。
売上を家族に管理して貰ってお小遣いを貰っているという人もいましたが,経費をどうしているのかしら。
弁護士の経費としては,「弁護士会費」という恐ろしい上納金?制度があります。
これについてのご説明はいつかお話したいと思いますが,今日は,生活費のことについてです。
生活をするのにあたって,正直言ってお金は欠かせません。
また,ばらばらに生活しているとしても,夫婦(配偶者)や親子関係,一定の親族関係にある場合,お互いに生活保持義務・生活扶助義務を負います。
「扶養義務」というのは,生活保護受給にあたっても話題になったので,ご存知の方も多いかもしれません。
生活保護法では,自身の持っている資産活用の原則,私的扶養優先の原則(公的扶助の補充制の原則)を定めています。
これは,扶養義務者が現実に扶養を行った場合に生活保護の必要性が減った場合,公的扶助である生活保護が受けられなくなるという意味です。
扶養義務者がいるだけで,生活保護が受けられなくなる(=生活保護受給が違法になる)というわけではありません。
もちろん,何らの扶養請求を行わない場合に求償などの問題が生じることはあるでしょうが,それはそれとして。
生活保護のこともいつか記事書きたいな。生活保護受給を叩く人は想像力が足りない!っていう話とか(笑)。
さて。「扶養義務者」とはだれやねんという話ですが。
●民法第877条(扶養義務者)
1 直系血族及び兄弟姉妹は,互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は,特別の事情があるときは,前項に規定する場合のほか,三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは,家庭裁判所は,その審判を取り消すことができる。
夫婦について定めた条文もあります。
●民法第752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない。
●民法第760条(婚姻費用の分担)
夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。
夫婦と,その間の未成熟子については,生活保持義務,その他の親族については生活扶助義務という分類をすることもあります。
これについて,大学生の時に習った表現で言えば
「保持義務は,最後のパンのひとかけらまで分け合う義務,扶助義務はパンを食べて残ったら分ける義務」
ということとされています。
すなわち,
自分の生活を犠牲にしてでも,自分と同程度の生活をさせるだけの援助をする義務が生活保持義務
自分が経済的な余力があった場合に,健康で文化的な最低限度の生活を営ませるのに必要な援助をする義務が生活扶助義務
ということです。
倫理(…と弁護士が言うのもおかしい話かもしれませんが)の問題はあっても,法的な問題としては
自分の経済力に余力があるかどうか,また,相手にどういう程度の生活をさせるのか,
というところで大きな差が出てくるところです。
ちなみに,「親族」の定義も民法で決まっています。
中学校の時とかに家系図を書いたり何親等なのか数えたりしたことがあるひともいるかもしれません。
●民法第725条
次に掲げる者は,親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
配偶者は分かるとして,六親等以内の血族と三親等以内の姻族って誰やねん。
ということになるわけですが,具体的には以下の通り…意外と多い。
(そして,私の答え合わせはウィキペディアさんと,民法の教科書…)
(ウィキペディアさんを編集した人は民法の教科書見てたんだなぁ…)
●6親等内の血族
1 父母・子
2 祖父母・孫・兄弟姉妹
3 曽祖父母・曽孫・伯叔父母・甥姪
4 高祖父母・玄孫・兄弟姉妹の孫(姪孫,大甥・大姪),従兄弟姉妹・祖父母の兄弟姉妹(大おじ・大おば)
5 五世の祖・来孫(五世の孫)・兄弟姉妹の曽孫・従兄弟姉妹の子(父母の大甥・大姪)・父母の従兄弟姉妹(祖父母の甥姪)・曽祖父母の兄弟姉妹
6 六世の祖・昆孫(六世の孫)・兄弟姉妹の玄孫・再従兄弟姉妹・従兄弟姉妹の孫(伯叔父母の曾孫)・祖父母の従兄弟姉妹(曽祖父母の甥姪)・高祖父母の兄弟姉妹
●3親等内の姻族
1 配偶者の父母(舅・姑)・父母の再婚相手・子の配偶者・配偶者の子
2 配偶者の祖父母・祖父母の再婚相手・継父母の父母・配偶者の兄弟姉妹・兄弟姉妹の配偶者・継父母の子・孫の配偶者・配偶者の孫・子の配偶者の子
3 配偶者の曽祖父母・曾祖父母の再婚相手・祖父母の再婚相手の父母・継父母の祖父母・配偶者の伯叔父母・伯叔父母の配偶者・継父母の兄弟姉妹・祖父母の再婚相手の子・配偶者の甥姪・甥姪の配偶者・兄弟姉妹の配偶者の子・継父母の孫・曽孫の配偶者・配偶者の曽孫・子の配偶者の孫・孫の配偶者の子
これだけ広い範囲でありますが,
民法での生活扶助義務については,三親等以内について「家庭裁判所が」「扶養の義務を負わせることができる」というにとどめています。
そのため,状況によっては,必ずしも扶養義務を負うわけではないということになりますね。
明日は,この「扶養義務」のうち,婚姻費用についての記事をアップしたいと思います。
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