給費制廃止違憲訴訟 札幌控訴審判決を受けた弁護団声明
write by きたあかり法律事務所
本日13時10分、札幌高等裁判所で出された、給費制廃止違憲訴訟の、札幌控訴審判決を受けた弁護団声明です。
弁護団声明
(給費制廃止違憲訴訟札幌訴訟第2審判決を受けて)
2020年12月18日
本日、札幌高等裁判所第2民事部(長谷川恭弘裁判長)は、元66期司法修習生(以下「控訴人ら」という)が国を訴えた裁判(平成31年(ネ)第170号 損害賠償等請求控訴事件、係属部:札幌高等裁判所第2民事部イ係 、原審:札幌地方裁判所平成26年(ワ)第2193号 損害賠償等請求事件、係属部民事第3部合議A係)について、控訴を棄却する判決を言い渡した(以下、「本判決」という)。
本判決は、国が平成16年法律第163号裁判所法の一部を改正する法律(以下「平成16年改正法」という)により給費制を廃止したことについて、控訴人らの憲法上の権利を侵害するものではないと判断した極めて不当な内容であり、控訴人・弁護団は強く抗議する。
これまで、全国の同種裁判において、控訴人らと同様の元司法修習生の請求が棄却される判決が相次いでいた(66期東京訴訟 1審判決:平成30年6月15日言渡し、同控訴審判決:平成31年2月6日言渡し、同上告審:令和1年9月6日決定、66期熊本訴訟 1審判決:平成30年4月16日言渡し、同控訴審判決:平成31年5月10日言渡し、同上告審:令和2年10月13日決定)。これらの判決については、いずれも、司法修習の実態を真摯に検討することなく、国の主張に無批判に追随するかのような裁判所の職務放棄に等しい内容であり、大いに批判がなされている。
本判決は、第一審判決の判決理由に加除修正を加えるという旧来方式で作成しており、裁判官の判決を書く態度として、そもそも疑問を差し挟まざるを得ない。しかも、本判決が第一審に対して加除修正を加えたのは、もっぱら立法過程における委員の意見答弁等であり、控訴人らの声ではない。
また裁判所は、控訴人らが控訴審において新たに提出した憲法学者の意見書とこれを踏まえた主張について、憲法学者の証人採用を求めた控訴人らに対し、意見書を十分に検討するとして証人採用をしなかった。にもかかわらず、判決内においては、当該意見書において批判された判断枠組にそのまま乗ってしまっており、十分検討する気もないにもかかわらず期待だけもたせて、結論ありきで証人を採用しなかったことが明らかになったと言わざるを得ない。十分に検討するとした憲法学者の意見書をまともに検討した形跡は皆無である。
加えて、本判決も、前記同種裁判の判決同様、国が司法修習費用の給費制を廃止したことについて、「給費制は、それ自体が憲法上保障ないし要請されている制度であるとはいえず、その廃止及びこれを復活させなかったことが違憲であるともいえない」などとという形式的な理由で、控訴人らの控訴を退けた。さらに、立法裁量に関する部分において「司法修習生を2倍に増加させて給費を2分の1にするということにしたとして、これで経済的理由から法曹を志望しなくなる者が貸与制にしたよりも少なくなるということもできないのであって」という、控訴人も被控訴人も主張していない言及をあえて追加していることからも、まともに給費制廃止にかかる問題を検討しようとする姿勢に欠けている。
いずれにしても、控訴人らが訴えている無給下での司法修習の実態や司法修習終了後の返済の実態について十分に検討しようとする姿勢は皆無であると断ぜざるを得ない。
札幌66期控訴審の審理は、平成29年法律第23号裁判所法の一部を改正する法律(以下「平成29年改正法」という)により控訴人らが谷間世代となった段階であり、また、控訴人らが貸与金の返済を余儀なくされた段階でもある。にもかかわらず、そのような本件の特殊性に一切関心を示さず、法曹の先輩としてのメッセージも発することもなかった。
これが同じ司法修習を経験して現在の立場にある裁判官が書く判決なのかと愕然とする思いである。
平成29年改正法により、平成29年以降に司法修習生となった者に対しては修習給付金が支給される制度が創設された。この実態は、司法修習費用の給費制の一部復活であり、給費制廃止が誤りであったことを国が認めたものと言わざるを得ない。
もっとも、平成29年改正法によっても、控訴人らは救済の対象にはなっていないのであるから、国においては、本訴訟で控訴人らが主張してきたことを踏まえて、控訴人らに対する救済策を速やかに講じなければならない。
控訴人・弁護団は、不当な判決に強く異議を述べ、今後も司法修習費用の給費制の復活と谷間世代の救済に向けて、最後まで闘い抜く所存である。
控訴人団長 小林 令
弁護団長 高崎 暢