皆川です。
離婚時に決めた養育費、成人が18歳になったから、養育費は18歳までになるの?という質問を受けることが続いています。
この点について、法務省のサイトで、こんなコメントが上がっていました。
子の養育費について、「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされていることがあります。
平成30年6月13日に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立したことに伴い、このような取決めがどうなるか心配になるかもしれませんが、取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからしますと、成年年齢が引き下げられたとしても、従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。
また、養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので、子が成年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には、養育費を支払う義務を負うことになります。このため、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
例えば、子が大学に進学している場合には、大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。
なお、今後、新たに養育費に関する取決めをする場合には、「22歳に達した後の3月まで」といった形で、明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。
成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について
結局のところ、合意の解釈内容によるということですよね。
また、最近では調停でも、「成年」という定め方ではなくて「●歳まで」というふうに年齢を定めて決めることも多いので、
実質的には、「18歳までだ」「いや、20歳までだ」という調停での主張(ないし訴訟での主張)に対して裁判所がどう判断するかということになるかと思います。
これについて、裁判所の判断が「こう出た!」という集積を待たなければなりませんが、私の予想だと、子供が高校よりも上の学校に進学する可能性がどれほどあるか、ということによるのだろうと思います。
そして、養育費は、必ずしも「成年」という概念と一致するものではありません。
たとえば、15歳であっても独立して仕事をしていれば(あまりないかもしれませんが)養育費の支払にはなりませんし
逆に23歳であっても、離婚時にはまだ19歳で、医学部に行っていた、というようなケースでは、支払が必要ということになるでしょう。
また、私が以前書いたブログ記事の内容をコピペします。
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オーソドックスには,協議離婚時の「子の監護に要する費用」として規定されている条文があります。
●民放766条
1 父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,父又は母と子との面会及びその他の交流,子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。
この場合においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前二項の規定による定めを変更し,その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては,監護の範囲外では,父母の権利義務に変更を生じない。
これが皆さんがぱっとあたまに思い浮かぶ「養育費」ではないでしょうか。
協議離婚をする時に,当事者間で話し合いができて,当事者間で決めることができるのであれば,
弁護士も裁判所も法律も要らない,というのは,婚姻費用の時と同じです。
これでもめそうだ,あるいはきちんと払って貰えなさそうだ,となった時に,弁護士や裁判所や法律が出てくることになります。
婚姻費用のところで少し触れましたが,婚姻費用には養育費が含まれます。
ですので,婚姻費用の支払請求をする場合に,別個に養育費を請求することはできない(していることになる)ことになります。
結果,具体的に養育費の支払請求をすることになる場面としては,夫婦関係が続いている時ではなく,離婚をする時となります。
もちろん,結婚をしていない夫婦の間の子供についても養育費の支払義務は生じます。
そのため,今回は離婚後の養育費についてのお話をさせていただきますね。
離婚後の養育費を裁判所を介して定めるには,
離婚手続の中で附帯申立
又は
離婚後に養育費支払請求調停
又は
離婚後に扶養料支払請求調停
を行うことになります。
具体的には,
離婚調停の中で養育費の支払についての合意をする
離婚訴訟に附帯する申立として養育費の支払を命じる裁判を求める
離婚後に改めて子の監護処分としてか扶養に関する処分としての調停申立をする
ということになります。
養育費は子供の生活していくための権利ですから,仮に離婚時に支払わないという合意をしたとしても,
やはり生活していけないということになれば,改めて養育費支払の調停を行うことは可能です。
また,養育費の調停は「別表第2の調停」なので(婚姻費用の記事参照),
調停で当事者間に合意が成立してこれを調書に記載したときは調停が成立したものとし,確定した審判と同一の効力を有するとされています。
また,仮に調停が不成立となった場合には,家事調停の申立ての時に当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなすとされており,
自動的に家事調停が家事審判に移行し,家事審判官による審判がなされることになります。
この調停調書や,確定した審判書を使って,差し押さえ等をすることができるというのは,婚姻費用と同じですね。
手続は以上ですが,やはり気になるのは具体的な金額でしょうか。
養育費の金額についても,婚姻費用と同じように,「養育費算定計算機」!みたいな民間のウェブサイトがあります。
あのウェブサイトの基本になっているのも,「簡易迅速な養育費等の算定を目指して」という裁判所からの提案論文です。
一定の幅はありますが,裁判所での調停や,場合によっては審判の際の目安になります。
具体的な考え方としては,
① 義務者・権利者の基礎収入を認定
(実額ではなく,税法等で理論的に算出された標準的な割合と統計資料に基づいて推計された標準的な割合による)
② 義務者・権利者及び子それぞれの最低生活費を認定
(親100,0歳から14歳は55,15歳から19歳は90という指数を利用)
③ 子に充てられるべき生活費を認定
(義務者の基礎収入を義務者・子それぞれの最低生活費の割合で按分計算)
④ 子の生活費を義務者・権利者双方の基礎収入の割合で按分して,義務者が負担するべき養育費を算出
ということになるのですが,数字を具体的に見てみないと何とも分かりづらいですね…。
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●成年になった子に対する親の扶養義務
成年になった子について,親は生活扶助義務を負うに過ぎないとするのが通常です。
とはいえ,これまで,「未成年」という言葉を敢えて使ってきませんでした。
「未成年」と「未成熟」というのは異なる概念です。
独立して生活をする能力があるかどうかで,未成熟・成熟の判断をします。
そのため,たとえば高校を卒業して働き始めた子は,未成年だけれども成熟した子であるということになり,
いわゆる「養育費」として生活保持義務の対象とはならないということになります。
一方で,成人に達した場合であっても,独立して生活をする能力がない子であれば,未成熟ということもありえます。
この場合には生活保持義務の対象となるとされることもあります。