夫婦の間の扶養について,親子の間の扶養(未成年の子について)について書いてきました。
それでは,一般的な「親族」の扶養というのはどういうふうになっているのでしょうか。
成年になった子から親に対する扶養請求というのは,あまり多くありません。
成年になった子が障害を負った場合などがケースとしてはあり得ますが,
殆どが年を取った親が子供に対して行う扶養請求に関わるもののようです。
お互いに扶養の義務を負っているのは,「親族」の中でもこんな関係の人達です。
●民法第877条(扶養義務者)
1 直系血族及び兄弟姉妹は,互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は,特別の事情があるときは,前項に規定する場合のほか,三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは,家庭裁判所は,その審判を取り消すことができる。
直系血族は,何親等以内かということに関わらず扶養義務を負うことになりますが,
さすがに五親等とか六親等の直系血族について,扶養をするということは現代日本でもなかなかないのではないでしょうか。
もちろん,自然血族だけではなく,養子縁組によるものも含みますので,うまくいったらいるのかもしれませんが,
それにしても限界があるでしょう。(寿命的な意味で)
●成年になった子に対する親の扶養義務
成年になった子について,親は生活扶助義務を負うに過ぎないとするのが通常です。
とはいえ,これまで,「未成年」という言葉を敢えて使ってきませんでした。
「未成年」と「未成熟」というのは異なる概念です。
独立して生活をする能力があるかどうかで,未成熟・成熟の判断をします。
そのため,たとえば高校を卒業して働き始めた子は,未成年だけれども成熟した子であるということになり,
いわゆる「養育費」として生活保持義務の対象とはならないということになります。
一方で,成人に達した場合であっても,独立して生活をする能力がない子であれば,未成熟ということもありえます。
この場合には生活保持義務の対象となるとされることもあります。
●親に対する子の扶養義務
一方で,親に対する子の扶養義務。
先ほども書きましたがなかなかシビアなものになり得ます。
というのも,年老いた親の介護も含め,兄弟姉妹のだれが面倒を看るのか?!といった問題になるからです。
これがのちのち相続問題にも関わってくることも多いので,きちんと兄弟姉妹で決めておいた方が良いのかも?
とはいえ,親の面倒を看ることについて兄弟姉妹で書面だの何だので決めごとをしている時点で何か間違っているような気もしますが。
具体的な扶養義務の内容としては生活保持義務に過ぎないとされます。
また,昔の裁判例を見てみると,引き取り同居を命じるような審判が出たこともあったようです。
今引き取り同居を求めるという裁判所の手続を実際にやったことのある弁護士はどのくらいいるのかしら。
私はやったことがありませんが,実際に行われていたのでこうして裁判例として残っているということでご紹介です。
●三親等内の親族の扶養義務
これは「特別の事情」がある場合に,家庭裁判所が審判によってこの事情があるかないかを判断して,
義務を負わせるかどうかを判断し,「特別の事情」があって,扶養要件を備えているとされた場合に,
扶養義務を負わせるというものになります。
審判例を探してみると,認められるケースはあまり多くないのかな?という印象です。
もちろん,話し合って解決されているようなケースは,裁判所に持ち込むまでのこともなく終わっているのでしょう。
今まで同居してお世話をした・されたの関係にあった人とか,以前に大きなお金を渡してあったことのある人とか,
そんな人に関する扶養義務について裁判所も「特別の事情」を認めている様に見えます。
なんだか教科書を書いてるような気持ちになってきました。
いろんな扶養についての書籍を読んで書いていますが,結局戻るのは受験生の時に読んだ書籍ですねぇ。
中川善之助先生(この名前じたいが古いという話もありつつ)。