2026年4月18日、参政党の神谷宗幣代表が札幌市中央区における街頭演説の中で、子どもへの教育に関連し「変なLGBTとかどうでもいい。あんなの教えなくていい」と発言した旨が報道されました(北海道新聞、同日付)。
当事務所は、差別やヘイトスピーチの問題に取り組んできた法律事務所として、本発言に対し以下のとおり抗議の意思を述べます。
憲法が保障する基本的人権に悖る発言であること
憲法第13条はすべての人に個人としての尊重を保障し、第14条は法の下の平等を定めています。性的指向や性自認は人格の根幹に関わるものであり、それを「変」と断じ「どうでもいい」と切り捨てる発言は、こうした憲法上の理念に照らして重大な問題を含んでいます。
なお、2023年に施行されたいわゆるLGBT理解増進法には、その実効性について様々な評価があるものの、少なくとも性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進を国として推進する方向性を示したものです。国政政党の代表による今回の発言は、その方向性にすら逆行するものと言わざるを得ません。
子どもの権利の観点から見過ごせない問題であること
子どもの権利条約は、子どもの生存と発達の権利(第6条)を保障し、あらゆる差別からの保護(第2条)を求めています。国内外の調査研究が繰り返し明らかにしてきたように、LGBTQの子ども・若者は、周囲の無理解によって深刻な精神的困難に直面するリスクが極めて高い層です。
性の多様性について学ぶ機会は、当事者の子どもたちが孤立から抜け出し、自己を肯定するための重要な手がかりです。「教えなくていい」という発言は、そうした機会を不要とし、結果として子どもたちを孤立と危険の中に留め置くことを意味します。法律実務の現場で様々な人権問題に触れてきた立場から、これは子どもの安全に直結する問題であると指摘せざるを得ません。
差別の構造を強化する言葉であること
「変なLGBT」という表現は、性的マイノリティを逸脱した存在として位置づけ、社会の中心から周縁へと押しやるものです。何が「普通」であるかを一方的に規定し、そこから外れた人々を「変」として排斥すること、これは差別が作動する際の典型的なメカニズムにほかなりません。
札幌市は2017年にパートナーシップ宣誓制度を全国に先駆けて導入し、LGBTフレンドリー指標制度を通じて民間との協働による多様性推進にも取り組んできました。こうした地域の積み重ねの上に立つ私たちとして、今回の発言には強い遺憾の意を表明します。
おわりに
多様な背景を持つ人々が尊重され、安心して生きられることは、社会全体の基盤を強固にするものであって、何かを犠牲にして得るものではありません。
当事務所は、性的指向や性自認に関わる差別のない社会の実現に向け、法律実務と社会運動の両輪を通じて引き続き力を尽くしてまいります。
自分の性のあり方について悩んでいる方、差別的な言動によって傷つけられた方がおられましたら、どうかおひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
2026年4月20日
きたあかり法律事務所
弁護士 島田 度
弁護士 皆川洋美
弁護士 林 拓哉