北海道の地域別の最低賃金は,本日現在764円です。
先日,当事務所の事務職員募集で提示した時給は950円でした。
一方で,私は最低賃金1500円活動にも賛同をしています。
それについて思っていることをつらつらと。
●健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な金額について
※すべての数字について,第一次的資料にはあたっていません。
社会学の場合にはアンケート先が第一次資料なのだとすれば,第二次的資料にもあたっていません。
私があたっているのは,社会学者の人が第一次資料にあたって調査した結果を発表した書籍などの第二次資料,その第二次資料を受けた報道や報告なので,第三次資料ということになるかと思います。
詳細な報告については今後有料配布の予定であるということなので,そちらに目を通してからと思っていますが,「最低生活費試算調査」(若年単身者)が分かりやすいと思います。
労働者を対象に,生活実態調査と持ち物財調査を実施し,その結果を精査して生活に必要な費用を算出したという調査です(母数約1000)。
それによると,札幌市で若者(10代から30代)がきちんとした生活(後述)を送るためには,
男性225,002円,女性220,249円(各税等込)が必要であり,年額では約270万円となります。
この場合に想定している「きちんとした生活」は以下の通りです。
・朝食は家でしっかりと食べ,昼食は,男性はコンビニなどでお弁当を買い(1食あたり500円),女性は昼食代を節約するために月の半分は弁当を持参。そのほか,月に2~3回,同僚や友人と飲み会・ランチに行っている。
という報告から,時給換算した賃金が1500円程度というのは,必要な金額であろうと思うわけです。
●貧困解決のためのセーフティネットとしては最後は公助でもいい
これは個人的な思いですが,これは若者が単身で生活するために必要なのはいくらなのか,という調査です。
たとえば,介護しなければならない人を抱えているとか,あるいは奨学金の返済があるとか,あるいは子供を産み育てるということになると,もっと多くのお金が必要だったり,あるいは短い時間での労働が求められるということになります。
そうなると,そもそもこの「きちんとした生活」の前提である1日8時間の労働ができるかどうかということなど,前提が変わってきます。
その場合に不足するものについては,公助でフォローしていくところであろうとは思っています。
なので,「自分は1日4時間しか働けないから最低賃金1500円にしてほしい」という話をしたいわけではありませんし,貧困問題からこの問題を提起する人も,別に労働時間を半分にしたいから最低賃金を倍にしてほしいという話ではないはずです。
ただし,今平均年収などを出した時に,前述の最低生活費を超えていたとしても,それが長時間労働による時間外賃金の支払いによって実現されているということであれば,それには異議を唱えたいところです。
●最低賃金という方法をとるべきか
最低賃金は,賃金がこれを割ると違法です。
違法であるという評価を受けた効果は,使用者は,その最低賃金以上の賃金を支払わなければならないという義務を負うことになります。
これは,経営者である自分の首を絞めることにつながることはわかっています。
ぶっちゃけ,これを実現できるように,トリクルダウンじゃなくてボトムアップにしてほしい,というのがこの活動だと思っています。
大企業が内部留保を作れて,中小企業の倒産が相次ぐ,あるいは人件費を削って雇用を生み出してる,なんてのを解決してほしい。
っていうのは最賃1500円活動のコアにあると思っています。
表面に出てくるのは「最賃1500円」という言葉かもしれないけれど,
別に最賃1500円切ってる使用者を責めたいんじゃなくって,
使用者の主張としても,最賃1500円払えるようにしてよ,っていう活動だと。
過労死問題と同じで,ひとつの事業所だけが頑張っても競争の中で負けてしまう。
みんなが安価などを理由にアスベストを使っている中,アスベストを使わないようにした建設業者は競争で負けてしまったのと同じ。
それらと同じように,国と自治体と使用者と一体になって実現しないとどうにもならないのが労働をめぐる法規制なので,最低賃金という方法をとるとともに,これを実現するための方策を打ち立ててほしいです。